街は日々新陳代謝を繰り返して、変化していく。仙台の街も例外ではない。
私がよくこの街に遊びにきていた頃のことを、今でもよく覚えている。
ギャル御用達のショップはたいてい、Eビーンズか十字屋にあった。もちろん私も足繁く通った。とはいえ、当時の私はまだ中高生。エゴイストやマウジーといったきちんとした(?)ギャルブランドで洋服を購入する金はない。それらの店内を流し見したあと、Eビーンズの下のほうの階にある、安価なギャル服を売っている謎の店などで服を買っていた。
当時、自分のことを最高にイケていると思っていたが、今の私が当時の私のファッションを目の当たりにしたら「やっす! ダッサ!」と辛辣なたった二言で打ちのめしてしまう自信がある。
そんな若かりし頃のダサダサな私が遊んでいた仙台駅西口も、いつの間にかパルコができたりエスパルⅡができたりと変化しているわけだが、ここ数年、特に目を見張るべきは東口の大変化である。
エスパル東館なるものができただけでなく、ヨドバシカメラもなんだかビルを増殖させて発展している……! しばらく仙台駅周辺で遊んだり飲んだりすることがなかった私は「えー何ここ! 知らない街なんですけど〜!」とたまげてしまった。
だって、↑こんな看板(?)すらなかった気がするんですけど? いや、あったのかもしれないけれど、この看板を認識することがないほど、東口は用がない出口だったわけですよ。
今はなき謎のビル「Bivi」に入っていた、「生まれた時からどんぶりめし」でお馴染みの半田屋くらいにしか用はなかったわけですよ。
で、この増殖都市東口で、仙台から帰京する直前にご飯を食べようと思ったのだけど……。
明らかに今話題っぽい風体の入り口
なんか知らん横丁ある〜〜〜〜!!!! どう見ても意図的かつ人工的に作られた横丁がヨドバシカメラのビルの1階に〜〜〜!!!!
ヨドバシカメラも昔はただのでっかい電気屋さんだったのに、デカくなりやがって……。親戚の高校生を見ているような気分になる。親戚に高校生いないけどさ。どちらかといえば、久々にテレビで鈴木福くんを目にした時の感覚に似ているかもしれない。
時間は午前中の11時、しかも平日。時間が時間だけに、いかにも居酒屋っぽい店は開店が17時からなどの場合も多く、いくつかネットがかかっているところがあった。もしお目当ての店があるのであれば、営業時間を確認してから行くのが良さそうだ。
昼飲みの舞台は「つね吉」! 君に決めた!
この時のメンバーは私、父と母、妹、そして息子だ。こういったメンバリングの場合、どうしても店選びにおける意見の優先度は息子が高くなってしまう。往々にして、ジジイとババアは孫に甘い。さらには妹も甥を尊重して「どこでもいいよ〜」などと宣う。
私が控えめに口にした「台湾料理のところがいい」という意見はものの見事にスルーされた。誰も私の言葉など耳に入っていなかっただろう。
息子のオーダーは「焼き鳥の皮が食べたい」だった。彼は無類の皮好き、皮ラバーなのだ。
妹が「じゃあ新時代は?」と揚げ皮串が名物の店を提案したのだが、ここはいかにもすぎる居酒屋。当然の如く、午前11時は準備中であった。息子は残念そうであったが、私は実のところホッとしていたのだ。これで私の「台湾料理がいい」というオーダーにもわずかながらの希望が湧いてきた、と。
で、決定した店が——
焼き鳥屋〜〜〜〜〜! 結局焼き鳥屋かよおおおお! しかも台湾料理屋さん「台中香」のすぐ隣!
なんで恨めしく台湾料理を眺めながら、焼き鳥を食わねばならないのか。オメー(息子)いつもイオンの焼き鳥食ってるじゃん! と、思いつつも、この店には料理を口に運ぶ前から私を納得させる要素が一つあったのだ。
それは後述することとする。
とりあえず乾杯なメニューで奇跡のおつまみを発見
とりあえずビールで乾杯! のために頼んだおつまみメニューが結構良かった。
特に、皆が静かな感動に包まれたのがこの焼き枝豆(380円)。塩気が強くてお酒に合うのはもちろん、殻のまま焼くだけでこんなに香ばしくなるのだと感心した。このメニュー発明した人、地味に天才だろ。
ちなみに、この店のオーダーはスマホから。ORコードを読み取って、その画面から注文する方式だ。
この、大人のポテサラ(580円)は、妹が大絶賛。
どこに大人要素があるのか私にはさっぱりわからなかったが、ポテサラの上に温泉卵が乗っているという変わり種。
美味しいことには美味しいのだけど、実は私は温泉卵が苦手なのだ。しかし、家族にその事実を明かしたことはなかったように思う。結局この時も、「ああ、うん、うまいね」なんて人生で無数に口にする雑な言葉だけを放った。
私が温泉卵を苦手としているだけで、予々家族からは好評なポテサラだったので、きっと100人いたら90人くらいは美味しいと判断する一品だろう。
仙台名物も食べられる!
仙台の隠れた(?)名物といえばこれでしょ〜。三角あげ(600円)。最近はよくサンドイッチマンがテレビで紹介しているから、昔よりよほど有名になっているかもしれない。
この三角あぶらげ(宮城県民は油揚げのことを“あぶらげ”と発音する)は、もとは西方寺という仙台の山奥にあるお寺周辺の名物。宮城県の人々からしたら、西方寺という正式名称よりも「じょうぎさん」という呼び方のほうが馴染み深い。
そのじょうぎさんにある本物の三角あぶらげは、この「つね吉」のあぶらげよりだいぶ大きいのだけれど、とりあえず駅前でサクッと名物を食べてみたいという人には一食の価値ありだと思う。じょうぎさんは仙台市青葉区(仙台で最もシティ。仙台駅も青葉区)といえど、山をぐるぐると回りながら登っていかなければならず、普通に遠いからね。
もちろん本家とは大きさや厚さが違う分、あぶらげの中のエアリー感やジューシーさには差があるものの、香ばしくて十分美味。
子連れにはマストなおつまみ、ガキ御用達おつまみ、ポテトフライ。
ポテト鑑定士である息子が「ここのはざっくり系だね」と評していた。ふにゃふにゃっとしたものは一本もなく、外側がさっくりとするほどしっかりと揚げられている。
ケチャップがちょっと変わっていて酸味が強い大人な味だった。ポテサラよりも、よほどこちらのほうに大人味を感じた。とはいえ辛味があるわけではないので、子どもも大人も美味しく食べられるちょっとオリジナリティがあるポテトという感じだ。
しかし、このポテトフライ、どうも不思議なことにメニューに載っていなかったようだ。一体我々はどうやって注文したのか……。
あとからメニューの写真を穴が開くほど眺めても、どこにもポテトフライという記載はなかった。ゆえに、店から出てしまった今現在、値段もわからない。
早め入店がアダに!? 焼き鳥でまさかの事態
焼き鳥屋をセレクトした目的を思い出して欲しい。
そう、皮だ。皮好きの息子を尊重した結果、我々の昼飲みの舞台は「つね吉」になったのだ。
が、まさかの事態が発生したのである。それは——
「皮がない!?!?」
正確にいえば、メニューにはきちんと皮は存在している。スマホの注文画面に品切れの表示があったのだ。
おそらくだが、開店直後の11時あたりはランチの注文を想定しているのだろう。平日の早い時間にガッツリ夜と同じようなメニューを注文してくる奴らはそうそうおらず、そもそも仕入れがないのではないかと感じた。
とりあえず気を取り直して、串ものを注文。
プリプリのはつ(180円)に、
歯触りがいいセセリ(260円)。
もはやこの時点で、誰もが皮のことなんて忘れていた。結局どの部位であっても満足度が高いのが焼き鳥の良いところである。
迫力のある月見ゲンコツつくねは580円。
正直、私のゲンコツよりもサイズは控えめであったが、9歳児のゲンコツくらいの大きさはあった。十分すぎるだろう。
で、美味しそうなことには美味しそうなのだけれど、ここでもまた温泉卵だ。月見と冠するからには卵がセットで登場することは想定内ではあるが、またも温泉卵とは……。
妹に「お姉ちゃんも食べる?」と言われたが、「あーうん、大丈夫」とやんわり退けさせてもらった。きっと妹は、すでに私が満腹なのだと勘違いしたであろう。
「つね吉」に入店した一番の目的はコレ
私が、「つね吉」への入店を納得した理由がこれ。
鰻〜〜〜〜〜〜〜!
とにかく鰻が好きだ。子どもの頃は鰻の皮の食感やたびたび鼻に抜ける川魚のような風味が苦手だったが、今は違う。金と胃袋の容量さえあれば、四六時中鰻を食べていたいと思うほどに好きだ。
これは鰻串3種盛合わせ(1,150円)。
まあ、これだけ鰻好きを豪語しておいてお恥ずかしい話だが、私は普通の鰻、つまり蒲焼しか食べたことがない。白焼きや肝は食べたことがなかった。
これは私が鰻を食べるのが、土用の丑の日という凡庸極まるタイミングでばかりだったこと、鰻屋でしっぽり酒を飲むなどの大人な行動を一切することなく、日本海庄やだの鳥貴族だので馬鹿騒ぎしながら酒を飲んでばかりいたことに起因している。
かくして、人生で初めて肝や白焼きを口にしたわけだが、私はやっぱり蒲焼が好きなのだと実感させられた。決して肝や白焼きが美味しくなかったわけではない。むしろこの日この店で口にしたメニューの中では確実にトップだ。それでも、ふんわりとほどける身とそれに絡まる甘いタレには勝てない。
3種を口にしてみたことで、自分の蒲焼好きを改めて認識させられた。
こんなおつまみもあった。鰻トロ(580円)。
メニューを見た時には、中トロやハラス的な鰻の中でも脂が乗った部分が出てくるのかと思っていたが、トロはとろろのことだった。
美味しかった。けど、やっぱり鰻はご飯の上に乗った重が最高だな!
実は、父が鰻重を注文していたが私が写真を撮影する前に食べ始めてしまっていたのだ。ハッとした父は「あっごめん! 写真撮る?」などと重をこちらに差し向けてきたが、おっさんの食いかけ鰻重の写真など誰が見たいというのか。丁重にお断りさせていただいた。
それにしても、開発が進んでいる場所がゆえに、時々しか仙台駅に来ない私にとっては未開拓な店が多い東口。このオイシイもの横丁は、次回の帰省で他の店(特に台中香)もに足を運んでみたいと思わせる場所であった。
ついでに、こんな可愛いおにぎりが仙台駅のNewDaysに売られていることも初めて知った〜! むすび丸〜!