通常、和食の懐石コース料理と聞くと「事前予約必須」のイメージを持つ人は多いはずだ。
その日、夕方までの用事の終了時間が曖昧だったため、宿泊するホテル「ホテルクラウンパレス」内にある「日本料理 四季」を席だけ予約していた。
実のところ、「席のみ予約」に対して不安もわずかにあった。いざ店に入ったら「コース料理はコース自体をご予約いただいていないと無理です。こちらのメニューなら〜(決まりきった寿司が10貫くらいの寿司御膳や鍋焼きうどん定食など)」という、「浜松駅前の石松餃子でビール飲んだほうが良かったのでは」という展開になりかねないか? と。
だって、そこら辺の居酒屋でもいきなり飲み放題のコース注文がNGなことだってあるではないですか。
結果的にいえば、全然大丈夫だった。ということを事前に申し上げた上で、「日本料理 四季」の料理についてレポートしていきたい。
席予約のみ…募る不安…
事前に「四季」のHPを確認しても、どこにも「※コース料理は、XX日前までにご予約ください」などの表記は一切見当たらなかった。
しかし、私はこのような場合、「非記載=予約なしでもイケる」とは考えない。
というのも、以前東京湾岸にある某ホテルのレストランで「事前予約必要」との記載がなかったレストランにて「そちらのコースは予約がないとお出しできません」と断られた経験があるからだ。まあ、然もありなんという事態ではあるのでそのときは「ですか」と納得して、すごすごと引き下がった。
しかし、今回はちょっと違う。コースで出せないと言われたら引き下がるしかない状況ではあるものの、浜松まで来ているのだ。夕食で「別に今そういうの食べたいわけじゃない」を感じたくない。
席につきメニューを渡されても、私はまだ戦々恐々としていた。「このコースって注文できるんですか?」とメニューを指差した瞬間まで。
「はい大丈夫ですよ」
と口にした、笑顔の、若くて可愛い中居さんに後光がさしていた。この瞬間、私は自分自身が思っているよりもずっと、「席予約なしでコースの注文が可能なのか」という部分に不安を感じていたことを自覚した。中居さんが天照大神図に見えてしまうレベルには。
何はともあれ、この「日本料理 四季」では席予約のみでもコースの会席料理をいただくことができる(場合によっては難しい場合もあるかもしれないが)。某湾岸のホテルのコースは、サラダ、スープ、メイン、デザートというわりとミニマムな仕様のコースを断られたわけだが、ここは違う。普通に懐石料理のコースだ。
先付けも焚合せも、サラダもメインもご飯も椀もデザートもあるぅ〜!
が、先に申し上げておくと、これは7月時点でのメニュー【文月 7,700円(税込)】であるがゆえ、季節によって変化があるだろうという点、料理の美味しさと酒の勢いあいまって、ズワイガニのサラダを撮影し忘れてしまった点を念頭にお読みいただきたい。
先付けにハズレなし
先付けって、「原料なんなん?」みたいな料理が乗っていることあるじゃないですか。謎の茶色い透明なゼリーとか、なんらかの穀物を丸めた和菓子っぽい、甘いんだかしょっぱいんだか予想もつかない食べるのが怖いやつとか。
私はどうしても先付けに関しては食べず嫌いをしてしまうきらいがあるのだが、「四季」の先付けは違った。「全部うまそー」と馬鹿な人しか使わないような言葉が思わず漏れた。
ざっと盆の上のメニューは、
- 豆乳滝川豆腐
- しらす、玉蜀黍(とうもろこし)、貝割(かいわれ)、胡瓜、柴漬け和え
- マヒマヒ南蛮漬け
- 石鰈(イシガレイ)、鱧、鮪、烏賊雲丹巻
“先付けあるある”で、字面だけ見ると何が何やらという感じだが、お刺身はもちろんのこと、見た目的にも全く危なげのないラインナップ。
豆乳滝川豆腐というのは、湯葉と豆腐の間のようなものなのだね。湯葉よりも少し崩れやすいお豆腐が層をなしていて上品な味だった。ちなみに、マヒマヒはシイラという魚のことらしい。ハワイあたりの魚なのだろうと受け流していた。
焚合せで一番美味しかった食材は…
焚合せは、折戸茄子彩り盛り、ミニフカヒレ、蛸柔らか煮、太刀魚、オクラ、パプリカ。
高級食材のフカヒレが四番ではあるのだろうが、実際に食べてみて、この日の焚合せのMVPは蛸だったといえる。
蛸〜〜! 弾力がありつつもとっても柔らかかった。
ちなみに私は「フカヒレは美味しいかどうか」という部分に関して、定期的に思考することがある。「美味しいんだけど味付けの調味料の味では?」と感じることが多く、フカヒレに支払ったそれなりに高い金額は私の舌や胃袋にどのように作用してくれたのだろうと、ぼんやりと考えてしまう。
まあ、美味しいんだけど。
メインは珍しい串物
コースの場合、多くが肉or魚の場合が多いが、「四季」では今回、肉、海鮮、野菜全てが盛り込まれた串物だった。
お酒を飲む人はコースの場合、メインが重いとどんなに美味しくても自分勝手に「惜しい」と感じてしまうことが多いのだ。お酒を飲む私にしたら量的にもジャストだったといえる。
内容もなかなか独創的で、
- 牛つくね
- 寄せ馬鈴薯明太子のせ
- 豚ロースアスパラガス巻き
- 車海老
- ズッキーニ&椎茸
と、頭二つは特に、味や食感が簡単に想像できず面白かった。
ソースもポン酢などの和食にありがちなものだけではなく、ジェノベーゼソースなど三種あり、一口ずつ味変も可能。
コース料金+2,200円(税込)でメインをランクアップすることができる。
フィレステーキと鮑〜〜! ブルジョワ〜〜!
ちなみに、このあとに「ボイルズワイガニのサラダ」が出てきたのだが、もうビールに肉に海鮮にとテンションが上がってしまっていて、写真撮影をうっかり失念していた。
ご飯ものはなぜか群馬
ご飯ものは、鰻の釜飯とひもかわうどんのどちらかから選ぶことができた。
実は私はこの二週間前にも浜松に来ており、そのときにすでにうなぎを食べてしまっていた……! そのため、今回はあえてひもかわうどんを選択。ひもかわうどんはどうやら群馬のうどんらしく、「なぜ浜松でひもかわうどん……?」という疑問は拭いきれない。
が、私としてはこのような幅広のうどんは初。個人的にはよくあるうどんよりもツルッとしていて軽く、食べやすい印象があった。普通のものよりも好きかも。
一緒にいた夫や息子も、結構感激して食べていた。もちろん、味はうどんなのだけれど、幅広の薄いうどんになるだけで、こんなにも感じ方が変化するとはね。ここでひもかわうどんに出会ったことで、我が家は「銀座あたりにあるひもかわうどんのお店に行ってみよう」と計画するほどまでにハマってしまった。
お子様弁当も豪華〜!
子ども用のお子様弁当は2,970円(税込)。
息子は小学校3年生の中でも体が大きくよく食べるほう。お子様弁当は全て完食の上、私や夫の串やお肉にも手を出していた。
小学校3年生くらいであれば、この量で十分な気がするな。
きちんとフタを開けて撮影しなかったけれど、左上は茶碗蒸し、黄色のお椀は煮麺。子どもの苦手なもの一切ナシ! 子どもからすれば最高に贅沢な一膳のような気がする。
味もさることながら
デザートは和風パフェ。
もちろん、味はさることながらデザートの段階で最も感じていたことは「日本料理 四季」の接客の素晴らしさ。
実はメインの段階で、ランクアップしていた夫の料理も手違いで普通のメインの串物が来てしまったのだが、そのお詫びとしてほうじ茶プリンなどをサービスしてくれた(写真左上にちらっと写っている)。
もちろん、すぐにランクアップした方のステーキや鮑のお皿を持ってきてくれたため、こちらはあまり気にしていなかったのだが。
ええー! いいのにー! と思いつつ頂いた。
日〜月曜日にかけての宿泊だったため、金曜日や土曜日よりもやや席にも余裕があったということもあるだろうが、慌ただしさがなく落ち着いて食事ができる空間だった。
何度もお酒の注文をお願いしたり、お酒の内容を聞いたりしたが、毎度にこやかに対応してくれている中居さんばかりでとっても感じが良く、味だけではない、非常に満足度の高いお店。
また浜松行きたい。